不動産会社にとって広告は集客の要ですが、作成には細心の注意が必要です。
不動産は高額な取引のため、消費者が間違った情報で判断すると大きな不利益に繋がります。
安心して家探しができるよう、広告の表現には特別な厳しいルールが設けられているのです。
意図的ではなくてもルールを破ってしまうと、違反金や業務停止、最悪の場合は免許取り消しといったペナルティを受け、社会的信用を失うことにもなりかねません。
そこでこの記事では、不動産広告を規制する法律や、NG例・違反事例などを詳しく解説します。
ルールを守りながら、反響の取れる不動産広告を作る方法についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産広告を規制する法律・ルール
不動産広告には、大きく分けて以下3つの規制があります。
- 宅地建物取引業法(宅建業法)
- 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)
- 不動産の公正競争規約
それぞれどのような規制なのか、確認しておきましょう。
宅地建物取引業法(宅建業法)
国土交通省が所管する「宅地建物取引業法(宅建業法)」は、宅地建物の取引を適正にし、購入者などの利益を保護するための法律です。
事実と異なる情報を載せる「誇大広告等の禁止」、建築確認を受ける前の広告を禁じる「広告開始時期の制限」、自社の立ち位置を明確にする「取引態様の明示」が3大原則として定められています。
もしこれらの規則を無視して運用した場合、行政から指示処分や業務停止命令を受ける可能性があります。
不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)
全業種を対象に不当な表示を規制し、消費者の利益を確保するのが消費者庁所管の「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」です。
この法律では、物件の品質が実際より優れていると見せかける「優良誤認」や、価格などの条件が他社より有利だと誤認させる「有利誤認」が厳しく禁止されています。
2024年10月からは「直罰規定」が導入されました。
これは故意に不当な表示を行った場合、これまでの措置命令というステップを経ずに、直接罰則が科される可能性がある厳しい規定です。
インターネット広告も対象となっており、一度でも違反が認められれば課徴金を命じられることもあるため、記載内容の精査は慎重になる必要があります。
不動産の公正競争規約
不動産業界が自主的に定めた、より具体的で詳細な広告ルールが「不動産の公正競争規約」です。
景品表示法に基づき、全国9つの地区にある不動産公正取引協議会が運用しています。
この規約で定められているのは、物件概要の書き方や徒歩分数の計算方法など、不動産広告特有の細かな表示基準です。
違反が認められた場合、協議会から厳重警告を受け、初回でも50万円以下、再発した場合は最大500万円の違約金が科されることがあります。
さらに厳重警告を受けた事業者は、主要なポータルサイトへの掲載が一定期間停止されるという重い制裁を受けることもあります。
不動産広告で重要な4つのルール|NG例や違反事例も紹介
広告作成時にとくに抵触しやすい重要なルールは以下の通りです。
- 誇大広告の禁止
- 広告表現の規制
- 二重価格表示
- 特定用語等の使用基準
具体的なNG例や違反事例も一緒に確認しておきましょう。
1. 誇大広告の禁止
誇大広告とは、事実と著しく異なる表示や、実際よりも優良・有利であると消費者に誤認させる表示のことです。
所在地、面積、環境、代金、支払方法など、あらゆる項目が規制の対象となります。
以下のように記載すると、違反になる可能性があります。
- 築10年以上経過しているのに「築浅」と記載する。
- 市街化調整区域なのに、その旨を伏せて「市街化区域」のように見せたりする。
- 「〇〇小学校すぐ」と書きながら、根拠となる所要時間や距離を記載しない。
実際の違反事例では、ポータルサイトの広告で「2SLDK」とすべきところを、居室と認められない納戸部分(S)を隠して「3LDK」と表示したものがあります。
消費者に部屋数が多いという誤認を与えたとして、厳重注意および違約金が科されました。
事実を正確に伝えないことは、それだけで大きな違反リスクとなるので注意が必要です。
2. 広告表現の規制
消費者が物件を正しく比較できるよう、交通アクセスや面積、写真などの主要項目には、客観的な表示基準が設けられています。
以下のような基本的なルールが定められています。
- 徒歩所要時間は「道路距離80mを1分」として算出し、1分未満の端数は切り上げる。信号待ちや坂道は考慮しない。
- 小学校やスーパーなどの施設は、道路距離を明記する。その補足として徒歩分数を添える。
2022年の改正では、分譲物件において「最も近い区画」だけでなく「最も遠い区画」からの所要時間も併記することが義務化されました。
以下は違反になる可能性があるので注意が必要です。
- 駅から物件までを直線距離で計算する。
- 土地面積にセットバック部分が含まれるのに、その面積を明記せずに合計面積だけを記載する。
実際の違反事例では、駅から徒歩21分かかる距離を15分と偽って表示し、厳重警告と違約金を受けたケースがあります。
3. 二重価格表示
二重価格表示は、実際に販売する現在の価格に加えて、それよりも高い販売価格などを併記して安さを強調する表示方法のことです。
たとえば「旧価格4,000万円→新価格3,780万円」など、値下げを強調することは、消費者が冷静な判断ができなくなる恐れがあります。
ただし、特定の以下の要件を満たせば例外的に認められることもあります。
- 旧価格が値下げ前2か月以上にわたり実際に公表されていた
- 値下げから6か月以内である
違反事例では、新築住宅の広告で、1号棟(2,590万円)と2号棟(2,290万円)があるにもかかわらず、安い方の「2,290万円」という価格だけを強調して記載したケースがあります。
これは全棟がその価格で買えるような誤解を与えるとして、不当表示と認定されました。
4. 特定用語等の使用基準
不動産広告には「新築」や「LDK」など、勝手な解釈で使ってはいけない用語があります。
新築と表示できるのは、建築後1年未満でかつ一度も居住されていない物件のみです。
LDKの表示も、居室数に応じた最低畳数の目安(1部屋なら8畳以上など)を守る必要があります。
さらに根拠がない限り、以下の用語の使用も原則禁止されています。
- 完全
- 絶対
- 日本一
- 業界一
- 特選
- 最高
- 格安
- 激安
消費者に過度な期待を持たせる断定的な言い回しは、信頼を損なう原因になります。
ルールを守りながら「反響の取れる不動産広告」を作る方法
不動産広告のルールをしっかりと守りながらも、ターゲットの心に響く工夫を凝らすことで、質の高い反響を得ることが可能です。
広告を作成する際は、以下3つのポイントを意識してみてください。
- ターゲットを絞る
- ベネフィットを伝える
- 写真の見せ方を工夫する
ターゲットを絞る
広告を「誰に届けるか」を具体的にイメージすることが重要です。
単に、30代ファミリー層とするのではなく、ライフスタイルや価値観、今の住まいの悩みまで深掘りした具体的なユーザー像を設定しましょう。
参考例は以下の通りです。
- 家族構成: 夫34歳(IT企業勤務・在宅ワーク多め)、妻32歳(育休中・時短で復職予定)、娘3歳(保育園に通園中)。
- 現在の住まい: 駅徒歩12分、2階(エレベーターなし)の2DKアパート。
- 今のリアルな悩み: 子どもが家の中でバタバタ走り回るようになり、下の階への騒音が気になる。毎日の買い出し時、子どもを抱っこしながら重い荷物を持って、エレベーターのない階段を2階まで上がるのが限界。
ここまでターゲットを深掘りできると、この人が求めていることは「1階の角部屋」や「音響対策のあるマンション(または一戸建て)」と明確になります。
広告では「足音を気にせず、のびのび子育てできる1階の角部屋」「仕事部屋も確保できる3LDK」と具体的なメリットを提示できます。
このとき「最高」「絶対」といった根拠のない特定用語の厳禁ルールを守りつつ、ターゲットの悩みに寄り添う言葉選びをすることが大切です。
ターゲットが「これは自分のための情報だ」と自分事化して捉えたときに、初めて問い合わせにつながるのです。
ベネフィットを伝える
ユーザーは物件そのものではなく、その物件で得られる「未来の生活(ベネフィット)」を求めています。
たとえば「駅から徒歩5分(400m)」という事実は、物件のスペックに過ぎません。
これを「駅から徒歩5分なので通勤時間にゆとりができる」「家族とゆっくり朝食を楽しめる」と変換して伝えるのがベネフィットです。
また、地元の不動産会社だからこそ知る「夕方の特売が人気のスーパーが近くにある」「隣のパン屋さんのクロワッサンが絶品」といった一次情報を加えることで、広告の信頼性は高まります。
ただし、スーパーや小学校を紹介する際は、「徒歩〇分」と書くだけでは不当表示になるため、必ず「スーパーまで320m(徒歩4分)」のように、実際の道路距離を明記するルールを徹底しましょう。
写真の見せ方を工夫する
写真は広告の第一印象を決定づける重要な要素です。
撮影の際は、自然光が入る明るい時間帯を選び、カメラの高さは床から1m程度に構えると、奥行きと広さが自然に伝わります。
三脚を使用して水平・垂直を整えるだけで、誠実で高品質な印象を与えられるでしょう。
なお、空室にCGで家具を配置する演出は「家具は価格に含まれない」などを記載すればルール上認められます。
過剰な画像加工は優良誤認のリスクがありますが、実際の印象に近づける程度の明るさ補正は「自然な範囲」として許容されます。
大切なのは、現況とあまりにかけ離れた修正をしないことです。
実物とかけ離れた美化は「おとり広告」や「誇大広告」とみなされるリスクがあるため、正確かつ誠実な情報開示のルールをベースに写真で魅力を伝えましょう。
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まとめ
不動産広告におけるルールの遵守は、単なる法的義務ではなく、顧客からの信頼を築くためにとても重要です。
事実に基づいた正確な情報提供を土台にし、その上でターゲットへの深い理解とベネフィットの提示、写真を工夫することで、質の高い反響へつながります。
また、広告で反響を得た後、多くのユーザーは自社ホームページを訪れるため、信頼を得られるサイト作りが欠かせません。
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