反響とキーワードとSEOのこと

不動産とSEO、コンテンツマーケティングに強くなるコラムですから、たまには不動産業界にまつわるコラムを書いてみたいと思います。

現在、これを執筆している私の前職は、とある不動産フランチャイズ本部でコンサルティング業務に携わっていました。
主に賃貸仲介店舗を対象として、ポータルサイトの分析や自社ホームページの導線整備からアクセス分析・WEB広告などの業務を行い、不動産業界とそこで働く人々、また業界のWEBマーケティングについて学びました。
ちなみに、その前は賃貸仲介の営業マンでした。
ということで不動産業界にどっぷりなので「反響とキーワードとSEOについて」をテーマに書くこととします。

ビッグキーワードに意味はあるか

  • 「港区 賃貸」での検索順位を上げたい
  • 「大阪大学 賃貸」で1ページ目に表示されたい

そんなことをとても良く聞きます。
実際に、弊社でも新人営業マンだと上位表示をしていれば成功している!集客できている!と考えてしまうこともあります。

しかし。
そのキーワードで上位表示を実現したとして、集客ができるのでしょうか。
アクセスが集まることは考えられますが、多くの場合答えは「NO」だと言えることでしょう。
それはどのホームページ作成ツールを使っても、どのホームページ制作会社を利用しても同じことでしょう。

集客の成功=アクセス

とした場合には一定の成果があるかもしれません。
しかし、実際に求めるのはユーザーからの「問い合わせ」ではないでしょうか。

月間1,000や2,000のアクセスがあっても月の反響が0~1件のホームページよりも月間300、400のアクセスで2件~3件の反響がある方がよほどユーザーの求めるものに一致するホームページだと考えます。

検索するのは今すぐ客ばかりではない

では、なぜ多くの場合答えが「NO」になるのか。
インターネットでの検索は思いついた時に誰でもどこでも行うことができます。

興味がある人もそうでない人も、そうして同業他社でも。

情報収集のために「なんとなく」のキーワードを打ち込み検索を始めた人が「なんとなく見かけた」ホームページで問い合わせを行うでしょうか。

人は比較をしたい生き物です、情報を探し始めた後に「もう少しこうかも」「こっちじゃなくて」などと条件を追加し自分の希望をより明確化していきます。
そう、接客をする時に「他にありませんか?」と聞かれる事があるように「まだ探せばあるのではないか」と思ってしまうのです。

そうしてユーザーが自分の中のイメージに合致するものへ問い合わせを行う時、ホームページとしてユーザーの欲求を満たす情報を提示できていなけばなりません。

それはポータルサイトや他社のホームページには掲載されていない角度から撮影した写真かもしれませんし、より詳しく物件についてコメントをしたレビューかもしれません。
いずれにせよ、情報提供なしにユーザーが満足することはないでしょう。

フロー図

こうしたプロセスを辿って最終的に問い合わせ(コンバージョン)につながるのですね。

本当に検索されるキーワードを探す

検索や広告のキーワードを考える時に特に簡単に思いつくのが「○○+賃貸」などのキーワードです。
しかし、その検索キーワードからの流入はどの程度のものでしょうか。
というか、もしかしてそれ同業他社が検索していませんか。わからないですけど。

そんなときは実際にお店に来店したお客様でも構いませんし、ご家族でも構いません。
不動産の業界に触れることが少ない方に「どうやってスマホで部屋探しをする?」と聞いてみてください。
思いもしない言葉が返ってくると思います。
そう、部屋探しをするとき我々が予測していたような「そんなキーワードでは検索しない」のです。

実際の検索クエリの結果と反響につながったキーワードを見ると

  • 東大生 下宿
  • 物件名
  • 東大 本郷 一人暮らし
  • 東大 一人暮らし おすすめ
  • 企業名

上記のようなものが見られます。
整理すると、以下のようなジャンルのキーワードで検索されていることがわかります。

  1. 会社名
  2. 物件名
  3. 地域や駅、条件などを組み合わせた複合的なキーワード

これはポータルサイトから「この会社はどんな企業なんだろう」と調べたい人が再検索をした場合も含まれますし、なんらかの手段で会社名を知ったユーザーが調べた可能性もあります。
物件名も同様で、追加の情報を知りたいと思うユーザーの心理や具体的な情報が知りたいと思うユーザー心理が集客のヒントとなります。

上位表示SEOが命ではない

cvまでの図

上記のことから、不動産ホームページの成功として上位表示のためのSEOが絶対ではないということを述べておきたいと思います。
いかにユーザーの目に触れる事が大切かという点において、トップページが検索の一番上に表示されなくても良いのです。

例えば複合的なキーワードで検索をしたユーザーの目に止まる回数が増えたとすれば、そこから問い合わせにつながる可能性は上昇します。
それこそ不動産ホームページの成功と言えるのではないでしょうか。

「そんなキーワードで上位表示って言われても」や「それなら誰でもできますよ」などという言葉もよく聞きます。
しかし、いざ実現しようと思うとこれがなかなか難しい。

すべてのポータルサイトもホームページも同じ物件をただ出力しているだけでは難しい話なのです。

自社の商圏はどこか、どんなお客様が多いのか、どんな探し方をされているのか…
検索をするユーザーの欲求を満たすための情報がそこに記載されているのかということが肝心です。

何もしないで集客したいという夢

「このホームページを使えば反響取れるんでしょう?」
「上位表示すれば反響入りますよ!」

そんなこともよく聞きます。
嘘です。

声を大にして言いたいところです。これだけは言いたい。
だって考えてもみてください、超大手ポータルサイトならまだしも地域にぽつんと存在する不動産店舗のことをこの広いインターネットの世界で誰が知っているというのでしょう。
これはどの業界に置き換えても同じです。
(そのためにネームバリューを貸すフランチャイズの方式があり、ロイヤリティと引き換えにある程度の集客を請け負ってくれるわけですね)
誰も知らない、有名でもない。
そんなお店が集客をするにはどうすればよいのか。

お客様にとってメリットのある情報を提示することです。

  • 流し見されてしまうポータルサイトやどこかのサイトでも見たような同じ情報ではない。
  • 企業の顔が見え、人を感じられる透明性があること。

物件情報にコメントを追加するなら「棟ページ」が良いでしょう。
振り出しに戻りますが、狙うべくはビッグキーワードではなく「検索をするユーザーの欲求を満たすための情報」です。

自社の商圏や来店するお客様がどんな条件で物件を探していたのか…
そうしたことから紐解くキーワードを集めていく作業こそ、集客への第一歩です。